音の3要素

あるピアノ技術者の方からいただいたメールに、面白いことが書かれていました。

これは「マロニエ君の部屋」の実験室という拙文に関することなのですが、つまるところ、ピアノの音はハンマーの「形」と「硬さ」と「重量」でほとんど決まってしまうということでした。

これはなるほどそうだろうと、素人のマロニエ君も直感的に思いました。
ピアノは、自分で設計して一から製作でもしない限り、既存のピアノに自分なりの音色の変化を与えるには、(調律を別とすれば)行きつくところはハンマーしかなく、そのハンマーとはこの3要素の兼ね合いによって成り立っているわけです。

響板やボディが健康な状態なら、あとはせいぜい弦の違いでしょうが、これは古ければ定評のあるメーカーの製品に張り替えるだけですし、巻き線も名人の巻いたものを張るのがせいぜいで、技術者の感性や技によって音を作り出すというような余地はほとんどないと思われます。もし仮にあったにしても、それはハンマーの3要素ほど劇的なものではないのかもしれません。

ハンマーの形は主にダイヤモンド型、洋ナシ型、たまご型で、その形状からしておおよその音の方向性は察しがつくというものです。ベヒシュタインのボムというドイツ語の発生そのものみたいな音がたまご型ハンマーであるなどは、いかにもイメージそのままで嬉しくなってしまいます。

フェルトの硬さは製造時に硬く巻かれたものと、そうでないものがあるし、あとは技術者が作り出すクッションのさじ加減という、これこそ芸術的な領域によるものだと思われます。

そこへ、今回その重要性がマロニエ君にも痛感できた重量の問題が掛け合わせれてくるのでしょう。
これはハンマーヘッドそのものの重さとそれを支えるシャンクとの合計ですが、たとえ総量は同じでも各部の重さの配分によっても音は当然変わってくるはずです。

あとはハンマーのメーカー固有の個性とか、使用されるフェルトの素材そのものがもつ性質からくる違いもあると思いますし、シャンクのしなりの特性によっても変わるでしょう。

この技術者の方が教えてくださったのですが、アメリカにはデイビッド・スタンウッドさんという、ハンマーの重さとタッチや音色の関係を研究している技術者がいらっしゃるのだそうで、ホームページもあるようです。
(LINKページの「海外のピアノ関連サイト」に掲載済み)

アメリカ人でこういう領域のエキスパートがいるというのは、ちょっと意外な印象を持ちましたが、日本人も本来得意な分野のはずで、実は深いところまで突き進んでいる方がいろいろとおられるのではないかと思います。ただ、あまり表にはあらわれず、そこがまたいかにも日本的なのかもしれません。

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