いま一部のオーディオマニアの間で、ささやかなブームになっているのが、塩ビ管スピーカー作りではないかと思います。
実はこういう世界があることは最近知ったのですが、マロニエ君の部屋にて拙文『Yoshii9』として書いている、同名の円筒形スピーカーを模して、自主工作によってその類似品を作るという人達がいるのです。
Yoshii9のもつ比類ない完成度の高さと、そこに聴かれるまさに輝く清流のような美しい音に魅せられた多くの人達がマニア魂に火をつけられ、この数年というもの、このスタイルのスピーカーの自作に挑戦奮闘しているようです。
自作が流行る最大の理由は、その無指向性型のスピーカーから流れ出る音の心地よさと、構造そのものは至ってシンプルで、一説によると通常のボックス型スピーカーを作るよりも簡単で、使う材料によっては安価でもあるということだろうと思われます。
しかし、では、ただ作ればいいのかといえば、そうではなく、問題はそこからいかに美しい極上の音を引き出せるかという点にあり、そのため各々試行錯誤を繰り返し、その悲喜こもごもの顛末はおもしろおかしく記録されて、多くのホームページなどで窺い知ることができます。
しかしそれは、マロニエ君にとって、世の中にはそんな趣味人がいるということでしかありませんでした。ある人からメールを受け取るまでは…。
ひと月以上前のことでしたが、マロニエ君のごく親しくしているピアノの知人がこれを作ったということを、何の予告もなしに、完成後にいきなり写真付きメールで知らせてきたのです。
まるで寝耳に水で、折しもYoshii9のもつ脅威的な音の世界に触れたことで、その鮮烈さに興奮さめやらぬというタイミングでしたので、なおさらのことそのモドキを作る人が、こんなにも自分の至近距離にいたなんて二重にびっくり仰天したわけです。
すぐにも聴かせて欲しいところでしたが、こういうときに限ってなかなか都合が合わずのびのびになっていたのですが、ようやく日曜にそれが叶い、聴き慣れたCDを携えて彼の自宅へ潜入することになりました。
彼はボディとなる円筒の材質別に、すでに3種類合計6本のスピーカーを作り上げており、見るとあれこれのホームページで見たものと同様のセオリー通りに製作されており、ただただ唖然とするばかりでした。
音のほうは、さすがに御本家のYoshii9には及ばないものの、それでもなかなか柔らかで好ましい、心地よい音を奏でていたことは特筆に値するものでした。
マロニエ君も製作してみないかと言ってくれますが、なにしろ工作の類はまったく得意でないというか、これまでにほとんどそれに類する事はやったことがないし、ましてやスピーカーなんてものは買うものであって、自分で作るなどとは考えたことさえありませんでしたから、はじめはまったくその気になれませんでした。
しかし、身近にそれを実行した人がいて、現物を見ると、知らず知らずのうちにその気になっていく自分が恐いような、笑ってしまうような、そんな気分です。
すでに、かなりその気になってしまい、早くも材料調達のためのいろいろなサイトを見て調べはじめていますから、このぶんではどんなヘンテコなものであれ、ひと組は作ってみることになりそうです。