ヤマハのグランドピアノのレギュラーシリーズとして、長年親しまれてきたCシリーズがこのほどモデルチェンジを行い、新たに「CXシリーズ」として発売開始されたようです。
サイズごとの数字がCとXの間に割って入り、C3X、C7Xという呼び方になりました。
外観デザインも何十年ぶりかで変更になり、鍵盤両サイドの椀木の形状はじめ、足やペダル部分のデザインはCFXに準じたものとなっています。個人的にはどう見ても(登場から2年経ちますが)美しさがわからないあのデザインがヤマハの新しいトレンドとなって、今後ラインナップ全体に広がっていくのかと思うと、なんとはなしに複雑な気分になってしまいます。
先週ヤマハに行ったとき、はやくもこの新シリーズの人気サイズになるであろうC3Xの現物を目にしたのですが、正直いってあまりしっくりきませんでした。
しかも一見CFシリーズと同じデザインのように見せていますが、よく見ると椀木(鍵盤の両脇)のカーブはえらく鈍重で、足も、ペダルの周辺も微妙に形が違っており、これはあくまでレギュラーモデルであることを静かに、しかしはっきりと差別化されていることがわかります。
決してCFシリーズと同じディテール形状なのではなく、あくまで「CFシリーズ風に見せかけたもの」でしかないことは事実です。
いずれにしろ、新型の意匠はどことなく、今やヤマハの子会社であるベーゼンドルファー風であり、より直接的に酷似しているのはドイツのグロトリアンのような気がします。
とりわけヤマハのC6Xとグロトリアンの同等サイズ(チャリス)、C7Xと同等サイズ(コンチェルト)は全体のフォルムまでハッとするほど似ているとマロニエ君には思われて仕方がありません。
もうひとつ、C3Xの現物の内部をのぞいてドキッとしたのがフレームの色でした。近年のヤマハのグランドのフレームは、シックで美しい金色だったのですが、それがCXシリーズでは、一気に赤みの強い金になり、この点も弦楽器のニスの色に近いとされるベーゼンドルファーの色づかいをヒントにしたのかとも思ってしまいますが、それにしても色があまりにもハデで、ちょっと戸惑います。
この色、見たときまっ先に連想したのは、ウィーンの出自という名目で、現在は中国のハイルンピアノで生産されている格安ピアノのウエンドル&ラングのそれでした。
ウエンドル&ラングの赤味の強いフレーム色は、中国的なのか、ちょっと日本人には抵抗のある色だと思っていたところへ、なんとヤマハが似たような色になったのは驚きでした。
全体的には、そこここに昔(Cシリーズ)のままの部分も多く、マロニエ君の目には要するにちぐはぐで中途半端な印象でしかなく、なんとなく釈然としないものを感じるばかりでした。
なかでも足の形などは、シンプルというより、ただの3本の棒がボディを支えて、下には車輪がついているだけのようで、その造形の良さや狙いが那辺にあるのか、これはデザインなのかコストダウンなのか、一向に理解できないでいます。
本当にその気があれば、もっとヤマハらしい個性に沿った美しいピアノのデザインというものはいくらでも作り出せたのでは…と思うと残念です。