予想外の不便

この夏からYoshii9型の円筒形スピーカー(通称;塩ビ管スピーカー)の自作に向けての情報収集や材料を準備していましたが、スタートから実に約3ヶ月余を経てやっと材料が揃いつつあります。

この円筒形スピーカーは、至ってシンプルな構造にもかかわらず、なにがそれほど時間がかかるのかというと、製作者であるマロニエ君に基本となるスピーカーの知識や経験がまるでなく、大半の知識をネットから辛抱強くすくい上げることと、そもそも通常の箱形であれば、手作りスピーカーのためのある程度の材料は専門店であれば揃っているものの、円筒形スピーカーの場合はまるきりそういう環境がないという点が大きなネックになったと思います。

この円筒形スピーカーの構成部品の中で必ずオーディオ用のものを使う部分といったら、基本的にはフルレンジのスピーカーユニットぐらいなもので、あとは筒本体、土台、仮想グランドという筒の内部の構造体など、あらゆるものが市販の建築資材などを随時応用しながら使うのですが、建築資材など、まさに無知のジャンルでしかもとてつもなく膨大ですから一朝一夕には事は運びません。

そんな中からスピーカー作りにちょうど良さそうなものを探し出すのは、工作少年でもなかったマロニエ君のような者にとってはまさに気の遠くなるような作業なわけです。
時間がかかるのは当たり前、調べ方さえもよくわからないし、部品部材の名称もわかりません。形状やサイズも様々なので、簡単に購入するわけにもいかず、手許に届いて少しでもサイズが違えば何の役にも立たないのでいよいよ慎重にならざるを得ません。

ごく単純な部品の調達などでも、専用品がなく規格外ともなると、ちょっとしたことでも困難が生じて、思いもよらぬ足止めをくらいます。
たとえばスピーカー本体となる1mのアルミ管を垂直状態に支えるための土台は、木の板を円形のドーナツ状に切り抜く必要があるということになり、そのためのカット作業は自分ではできないけれども、専門家に頼めば簡単にすむだろうと思っていたところ、さにあらず、とてもそう思い通りにはいきませんでした。

少し具体的に言いますと、厚さ3、4センチほど板を直径21センチの円に切り出して、さらに真ん中に10センチの穴を開けるという、たったそれだけのことが今どきはものすごい困難なわけです!
板は厚いものがなければ薄いものを貼り合わせればいいと思っていましたが、板なんてものはいくらでもあるようで、要は「円形に切る」というのが少々の所ではできないのでした。

ホームセンターの類に聞いても、直線のカットはできるようですが円形となると軒並みできませんという返事が返ってきますし、昔は結構あったように思える木工所の類も、ネットで見る限りよほど遠方に行かないとありません。

やむを得ず、複数の知人にこの件を相談したのですが、彼らはマロニエ君が送った寸法見取り図をもとに、すぐに知り合いの木工職人の方に掛け合ってくれたのですが、結果はいずれもマロニエ君にとってはゼロをひとつ間違えているんじゃないの?といいたくなるような金額を提示されて、驚きつつ、とてもではないとすごすご引き下がりました。

最近では、いわゆる普通の素朴な木工所というものがなくなっているようで、たまにあるのは手作りの高級家具をオーダー製作するといったような、いわば家具作家の工房のような性質の店になっており、とてもこちらの目的と予算に合うような手軽な感じで引き受けてくれるところがありまません。

素人の考えとしては、たかだか土台なんですから、そんな上質なこだわりを持った仕事ではなしに、目的と要望に応じて、二つ返事でサッと作ってくれる職人さんみたいな人がいそうなものだと思っていたのですが、どんなにネットで探してもそういう店はありませんでした。
何事も世の中が飛躍的に桁違いに便利になったこの頃ですが、その陰で、こういう人の手を必要とする類の作業依頼となるとものすごく不自由で、「なんで?」と思うほど小回りの利かない世の中になってしまったものだと思いましたね。

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