ヴォロドスはビジュアル系?

先週のNHK芸術劇場は嬉しいことにピアノの日でした。
はじめ3/4はアルカディ・ヴォロドスのウィーンのリサイタルの模様と、のこる1/4はフセイン・セルメットの展覧会の絵が放映されました。
ヴォロドスのウィーン演奏会の様子はすでにCDやDVDでも発売されているものですが、解説によるとヴォロドスの演奏の映像はこれまでにあまりなく、非常に珍しいというようなことでした。
マロニエ君はこの人のCDはチャイコフスキーの1番とプロコフィエフの3番を小沢/ベルリンフィルと弾いたものと、もう一枚(内容は忘れました)を持っていましたが、やや大味であまり好みのタイプではないので、それ以降もあまり関心を寄せてはいませんでした。

彼の音楽的内容はともかくとして、この映像はかなり面白いものでした。
まずはその見事な巨漢ぶり。大きなコンサートグランドが小さく見えるようで、現在この人に並ぶ人は、鍵盤にお腹がつっかえそうなブロンフマンぐらいでは。
オスカー・ワイルドはじめ、巨漢の芸術家というのは、すでにそれだけでなにやら一種独特な熱気をまき散らします。
正面からのショットでもほとんど首らしい部分はなく、その両側にあまったお肉が左右に張り出して迫力満点、まるでどこぞの外国人力士がピアノを弾いているようでした。

また、いきなり目に付いたのが、椅子が普通のコンサートベンチではなく、子供のお稽古や中村紘子女史がよく使う背もたれつきのピアノ椅子でもなく、なんとそのへんの会議室の隅にでも積み重ねてあるような安っぽい感じの椅子でした。
演奏中はその薄い背もたれに巨大な上半身を後ろに倒れんばかりに寄りかからせることしばしばですが、いつ椅子がボキッと壊れるのかとひやひやするような珍妙な光景でした。

顔の表情の変化がまたすごい。大きな目や眉や口が曲想に応じて苦痛や陶酔をくるくると作り出し、まるでビックリ映像のようでした。彼に匹敵する顔の表情パフォーマーは内田光子かランランぐらいでしょうか。
ランランといえば彼は欧米化されたのか、最近は表情がおとなしくなってつまらなくなりましたね。むかしデュトワ/N響とやったラフマニノフの3番はもはや伝説です。

会場だったウィーンの学友協会ホールは通称「金のホール」と呼ばれる、文字通り金色づくしのまさに豪華絢爛ホールですが、マロニエ君にはニューイヤーコンサートなどの印象が強烈で、ピアノリサイタルにはちょっと違和感を覚えましたが、地元では普通なのでしょうか?

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