猫の里親になろうかという考えは、以前に綴ったような経緯もあって、自分としてはいったん心の奥底にしまい込んだつもりだったのですが、やはりどんな理屈をつけてみても、気になるものは気になるわけで、その後も思いつくままにホームページをチラチラと「流し見」したりしていました。
するとその中に、なんともマロニエ君好みの、凛とした高貴な表情が見る者を引き寄せる、濃いグレー系の身体をした雄猫が目に止まりました。保護されてすでに3ヶ月も経つというのに、いまだに人や環境と馴れ合うことをせず、施設でもいわゆる一匹狼を通している由でした。
現在の保護者でさえ、めったなことでは抱っこすることも難しく、人を頑として拒んでいるそうで、よほど苛酷な目に遭ってきたものか、はたまた生来の孤独なサムライ気質の猫殿というわけでしょう。
以前の電話で「写真が可愛かったから連絡されたのですか?」という、まったく頓狂な質問をされて憤慨したばかりでしたが、今回も甚だ不本意ながら、一枚の写真に魅せられてその猫のことが気にかかり始めました。
マロニエ君はとくだん面食いという訳ではありませんし、ましてや人や動物の美醜だけを追いかけ回すつもりは毛頭ありませんが、それはそうなのですが、自分にとっての判断基準として、やはり視覚的要素というものはかなりの要素を占めることもまた事実で、やはりここを疎かに出来ないことも確かです。
ま、そんなくだくだしい言い訳をしても始まりませんが、とにかく、ひと目そのサムライ猫が見てみたくなって、ついには、その施設へ赴く次第と相成りました。
自宅からは結構な距離もあるようでしたが、まあ半分はドライブのつもり行ってみることに。そこは一応予約をして行くことがルールのようになっているので、いちおう電話して大まかな到着時刻だけを伝えると、あっけなく希望する夕刻の時間帯が確保できたので、これはもう行くしかありません。
ちょっと不安もあるし、一人で舞い上がってもいけないので友人に同行してもらいました。
HPによれば、ここにはもう一匹気にかかるのがいて、こちらはひたすらキュートなタイプの猫で、まだ生まれて3ヶ月なんですが、これはこれでたいそう気に入っていたのですが、こっちはすでに里親が決まってしまった由、やはりなんらかの魅力ある猫であればあるだけ、嫁ぎ先も決っていくということが実感されました。
ちなみにそのサムライ猫は、その人を寄せ付けないサムライ気質である故か、まだ施設にいるとのことで安心といえば語弊がありますが、ともかく目的とする猫には会えるということが確認でき、週末の夕方で混み合う街中を車を走らせました。むろんサムライ猫に限らず、そこには相当数の猫がいるようなので、多くの猫達に囲まれるというのもひじょうに楽しみではありましたが、同行する友人はよくよく聞いてみるとそういう経験のないとのことで、まもなく到着という段階になってはやくもビビリモードになっています。
昔は知らないところへ行くのは、マロニエ君は生まれつき方向感覚などは悪くはなかったのでそれほどの苦労はしないながらも、やはり地図を広げて下調べなどが必要でしたが、今はカーナビのお陰でどんなに見知らぬ場所へ行くにも、エンジン始動後にパッパッと情報を打ち込むだけで、いっさい迷う事無く、至ってスムーズに目的地を目指せるのはいまさらながら便利になったと痛感する瞬間です。
果たして到着したところは全く馴染みのない、これまでに一度も足を踏み入れたことのないエリアの住宅街で、カーナビも最終的なルート案内を終えようとしている頃、HPで見覚えのある特徴的な建物が暮れなずむ目の前に現れました。
どんな猫達がいるのやら…。