寒中洗車

マロニエ君はクルマ好きの洗車好きでしたから、若いころは暇さえあれば車を洗っていましたが、だんだんそうもいかなくなり、今では月に一度も車を洗うことなどありません。

年末年始もとうとう車は汚れたままで過ぎ去りました。
なにやかやで洗車する時間もないことと、天候も不順で、せっかく洗ってもいきなり雨では馬鹿馬鹿しいので、そんなことで自分の都合と天気の様子見ばかりしていると、洗車するきっかけなんて永久にやってこないような気がしていました。

それでも、さすがにもうそろそろと思ってみますが、このところの寒さと来たらただ事ではなく、給油の時にスタンドで洗車をしている人達を見るだけでも歯茎がガタガタいいそうで、とても自分が実行しようという気にはなれません。

マロニエ君が車の汚れでイヤなのはいろいろありますが、そのひとつがホイールがブレーキパッドの粉でだんだん黒くなってくること、もうひとつはフロアマットが汚れるというか、靴底に付いた小石やゴミなどでだんだんと床が散らかってくることです。

どうしてもガマンできなくなったときは、マットだけを外して、水を使わず硬いブラシでブラッシングすることでごまかしますが、いずれはていねいに掃除機をかけなくては解決しません。
とにかく、何をどういってみてもホイールは黒ずんでいるし、洗車をしないことにはどうにもならないところまで来ていたことは確かでした。

そしてついに決断のきっかけがやって来ます。
関東地方にその名も「爆弾低気圧」とかいうのが襲ってきて大雪をもたらし、首都圏が交通麻痺を起こしたその翌日、なぜか我が福岡地方は天気晴朗、天からはなにも降ってくることのない気配を感じたとたん、まるで発作的に重い腰を上げる決心がつきました。

夕食後、とうとう長い沈黙を破ってついに洗車を開始しました。
車の外気温度計によると外は4℃で、家の中でも廊下などは冷蔵庫みたいに冷え切っていますが、いったん覚悟を決めて洗車用の上着を着て外へ出ると、不思議なことにほとんど寒さらしきものも感じません。
それどころか、洗車が好きだった頃の感触がほんの少し蘇ってきて、かすかに楽しいような気分になるのはどうしたことだろうかと思います。

いざやってみれば、あれほどなにやかやと理由を付けてしぶり抜いていた洗車ですが、ひとたび着手すれば次々に作業ははかどり、車はみるみるきれいになるし、何の苦もなく片付いていきます。
やっぱり人間は気持ちひとつなんだなあと柄にもないことをしみじみ思います。

おそらく向かいにあるマンションの住人は、車の出入り口が我が家のガレージの真ん前にあるので、出入りするたびにこんな夜更けに洗車なんぞしていいる様子を見て、さぞ呆れているだろうと思いますが、実は本人は何の苦痛もないまま、むしろ嬉々としてやっているのですから、自分でも不思議です。

よくテレビで寒い中をわざわざ海中に入って気合いを入れるなど、見るからに心臓に悪いような映像がありますが、あれも当人達は余人が思うほど辛くはないのかもしれないと思いました。
洗車をした日は、2時間ほど休む間もなく動きまくるので適度な刺激と運動になるのか、いつもなんとなく爽やかな気分になれるので、こんなことならもう少し頻繁にやろうじゃないかと(そのときは)思うのですが、なかなかそれが定例化しないところが我ながら情けないところです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です