笑っていない目

暮れにちょっとしたリフォームに関することを書きましたが、少しその後の続きのようなことを。

結局、マロニエ君の知人の紹介(あくまでも間接的な)ということで、とあるリフォーム会社とやらの女性社長が技術系の男性を伴ってやって来ました。

もちろんその社長とは初対面で、むこうはマロニエ君というペンネームも、ピアノとの絡みなどもまるで知らないし、ましてやこんなブログなんて見るはずもないので、まあ敢えて書きますが、これがなかなかの社長でした。

挨拶もそこそこにこちらの意向を伝えて、しばし雑談などをしたあと、直ちに現場の検分がはじまりました。この社長、何を頼んでも聞いても、決して作り笑顔を絶やさず、いかにも意識的な柔らかな口調で「はい、できますよ。大丈夫です。じゃあ○○しましょうね。」とこちらの意向を次々に受け容れながら、もうひとりの男性とも軽いやり取りを交わしながら、次から次へと現場を見て回っています。

それが一段落つくと、再びイスに座って楽しげに歓談して、適当なタイミングで帰っていきました。雰囲気でいうと、代議士の小池百合子さん風とでもいえばわかりやすいでしょうか。

「できるだけお安く願いたい」ということは何度も念押ししておきましたし、先方もそのことは了解したような応対でしたから、あとは金額の提示を待つだけです。ただマロニエ君としては、その社長の目がずっと気になっていました。
…なんというか、パッと見た感じはいかにも爽やかで優しげ、時にはこちらのことを思いやってのようなフレーズもしばしば口にしながら、いかにも良好な歓談が交わされましたが、彼女の目には常にビジネス人間としての自意識が漲っており、心の内側で決して踏み外さない一線を保っているのがミエミエでした。

どんなに笑っても、真から笑っていないし、どこか常に冷めてことは自慢ではありませんがマロニエ君は見逃しませんでした。帰られた後にそのことを云うと、同席したあとの二人は「そーお?」という感じでしたから、だれにもバレバレというものでもないようです。

それから一週間を過ぎたころ、見積書とやらが大きな封筒に入れられて恭しく送られて来ました。
果たして、何枚もの書類が束ねられ、むやみに項目が多いことに加えて、最終金額はこちらの予想を遙か彼方へ吹き飛ばすような無遠慮な数字がドカンと記されていました。
本来ならもっと驚いたかもしれませんが、マロニエ君はその社長の人物観察を通じて、ある程度こんな結果が出るのではないかという予想をしていたので、それほど驚倒はしませんでしたが、まったく大胆というべき数字でした。

呆れて、しばらくはそのあたりに放り投げておきましたが、後日詳細を見てみると、その見積がいかに巧みに書かれているかがわかりました。あまり具体的なことを述べるのは控えますが、例えば誰にでもわかりやすいクロス(壁紙)の張替代などは商売気なんかありませんよ!と言わんばかりに安く書かれているのに対して、ほとんど意識にものぼらないようなちょっとしたことなんかが、ケタがひとつ違うのではないかと思うほど高かったりの繰り返しでした。
つまり素人に安さがすぐ比較しやすいものに関しては激安にしておく一方で、そうではないものに関しては思い切りよく高額な数字がこれでもかと並んでいます。

よくいえばメリハリがきいているということかもしれませんが、今どきの情報化社会であっても、リフォームの世界は要注意分野というか、よほどこちらがしっかりしていなくてはいけないジャンルだというのが率直なところでした。
まあ男でもどちらかといえば荒っぽいハードな世界とでもいうべき建築関係の会社を、そう歳でもない女性が社長として切り盛りしてやっているのですから、そのしたたかさたるや並ではないようです。そのへんの甘ちゃんとは異次元の猛者なのだということがよくわかりました。

まあ、見積はあくまでも見積であって、依頼するかどうかの意志決定はこちらが握っているわけですが、要はこの世界、努々油断はできないということのようで大変勉強になりました。

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