続・断捨離

断捨離の精神が『人生や日常生活に不要なモノを断つ、また捨てることで、モノへの執着から解放され、身軽で快適な人生を手に入れる』という事は、たしかに一面に於いては納得できる話ではあります。

マロニエ君のまわりにも、パソコン上で未読メールを何千通も抱え込んで消そうともしない友人がいたりしますし、巷には「片づけられないオンナ」というのが多いのだそうで、きっと男にも同類がいるでしょうし、これは単なる横着や怠け者というより、ほぼ脳内の問題のような気がします。

ゴミ屋敷などという甚だしく社会迷惑な家も珍しくない時代ですが、物が捨てられない人が決まって口にする言葉は「これはゴミではない。自分にとっては必要な物で宝物、いつか必ず役に立つことがある」などと云うようですが、聞かされる側はとても納得できることではありません。

「モノへの執着から解放される」というのは、ある意味に於いては清らかな精神を持つための第一歩かもしれません。むかしテレビで見たマザー・テレサは、多くの修道女達を従えて彼女達の為に準備された住まいに入るや、いきなりカーペットを剥がし、調度品を屋外に運び出し、物に執着しない高潔な精神の持ち主であることを躊躇なく実践して見る者を驚かせました。(尤も、彼女は実は大金持ちで、いろんな噂もあるようですが…)

また、司馬遼太郎の『龍馬がゆく』では、千葉道場のさな子との別れに際して、龍馬が自分の形見の品を渡そうとするものの、ふと気がつけば彼には刀以外に何一つ持ち物がなく、やむを得ず着物の袖を引きちぎってそれを渡すというところがあり、いかにも私欲のない、器の大きな、些事に恬淡とした龍馬という人物を象徴的に描いています。
史実の上でこれが真実かどうかはともかく、若い頃これを読んだとき、本物の男の究極の姿とは、そういうものなのかと考えさせられたことがありました。

モノに限ったことではないですが、何事においても「執着する」ということは、正当な目的をもつということとは似て非なる事で、執着はその人の本来の能力や自由を奪い、ひとつのことに縛り付けるという副作用があるようです。出世への執着、金銭への執着、権力への執着などは、どれもがその病的な心の作用に翻弄されているばかりで、見聞きして気持ちのいいものではありません。

また最近では、新種の執着族も激増して、たとえばスマホから離れられないような人達もそのひとつかもしれません。便利な道具として賢く使いこなすのではなく、完全に道具に人間が支配されていほうが多いでしょう。とくに若い人ほどその傾向が強く、その執着心に捕らわれている代償として、感情や言葉までも貧しくなり、本来の人間としての能力まで錆びつかせているようにも感じます。

こう考えると、不要物もそんな害悪のひとつであることは否定できませんから、なにも極端な断捨離を目指さないまでも、ほどほどの整理整頓を実践することで、そのぶん心も軽く自由で快活になるとしたら、やはりその価値はあると思いますが、かくいうマロニエ君もなかなか思うようにはできません。

しかし「過ぎたるは及ばざるがごとし」の喩えの通り、あまり何もかもを不要物と見なして捨て去るのもどうかと思います。マロニエ君の私見ですが、ある一定量の物は、心に安心と豊かさをもたらすという一面もあるはずで、その一線は崩すべきではないように思いますが、これも個人差があるでしょうね。

マロニエ君は、稀によそのお宅などに行ってギョッとしてしまうことがあります。
それはあまりにも物が少なく、まるで何かの事情があっての仮住まいか、はたまたウィークリーマンションとか、とにかく生活の実感が持てないほど物の少ない住まいというものを見て心底驚かされたことは何度もあり、あれもどうかと思います。

断捨離の精神からすれば、それは称賛される光景かもしれませんが、少なくともマロニエ君の目には快適空間というよりは、殺風景で寒々とした空間としか目に映らず、気が滅入ってしまいます。
何事も自分に合った程良さというのが肝要だろうと思います。

続・断捨離」への1件のフィードバック

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     初めまして。不用品をもったいなくて捨てられない気持ちにとても共感します(^_^)/
     それで、いきなりですが、不用品をバザー品として送れる場所をお伝えします。大阪にある、『豊能障害者労働センター』で、5つのリサイクルショップを運営して、バザー品はそこで売られています。売り上げ金は、主に障害者福祉に使われています。
     私も「ずっと長く使う」と信じて買ったものが、意外と使わなくなった、ということが、よくありました。以前はもったいないと思いながら、不用品を泣きたい気持ちで仕方なく捨てていましたが、今はここの労働センターに送れるので、とても嬉しいです(^^) それで、私と同じように、「使わないものを捨てられない」と悩んでいる人を助けたくて、多くの人に、この労働センターを教えているのです。
     バザー品の送り先のHPは http://www.tumiki.jp/bazar.html
    です。ここでは、一般のリサイクルショップで引き取らない物や、他のバザー会場で売れ残った物も受け入れていて、それらはきちんと商品として販売されています。
     また、ここの送り先を気に行って下さったら、知り合いの方にも伝えて頂けると嬉しいです。私は一人でも多くの「もったいなくて捨てられなくて困っている」方々を助けたいので(^^)

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