店内自衛隊

おもしろい話を聞きました。

その人は土曜の夕刻、天神で化粧品などを買うため、ある有名な薬局兼化粧品店に入ったそうです。
ここは天神の中でも最も人通りの多いエリアで、土曜ともなると大変な人出で賑わっていたようですが、その人が店に入る直前、表通りに外国語(アジアの大国)をさかんに喋る一団があって、雑踏の中でもどことなく目立っていたといいます。

この国の人達は、おとなしい日本人とは違い、どこでも構わず独特の調子でワアワアしゃべりまくるので日本人でないことはすぐにわかるそうで、それはマロニエ君も何度か経験しています。こちらに居住している留学生などはまだそれほど強烈ではないのですが、観光客は旅行中ということもあるのか、その声のボリュームとテンションは傍目にもかなりのものです。

さて、薬局兼化粧品店の店内もかなりの混雑ぶりだそうで、3つあるレジはフル回転状態だったとか。
すると、さっき外で見かけたその外国人旅行者の一団(7〜8人と旗を持つ添乗員がひとり)がどやどやと入ってきて、たちまち各自あれこれ商品を手にとって品定めが始まったそうですが、同時に店員の表情が傍目にもわかるほどあからさまに変化した(こわばった)そうです。

すると、ある奇妙な動きが起きたというのです。

そんな繁忙時間にもかかわらず、5〜6人の店員が各々の忙しい仕事を中断してサッと動き出し、その旅行者達のまわりをさりげなく取り囲むような陣形を布いたそうです。
お客さんに商品説明をしていた人も、すぐにそれをうっちゃってこの態勢をとるし、3つのレジもひとつがすぐに閉鎖され、すかさず監視要員に早変わりしたというのですから驚きです。

こうも息を合わせたように、すみやかな動きが取れるようになる陰には、よほど日頃の丹念な打ち合わせが整っていたに違いないというわけです。
それにしても、日本でこれほどお店の店員が迅速かつ警戒的な動きをするというのは、マロニエ君もほとんど覚えがなく、よくよくの事だろうと思われます。おそらく、その必要を強く認識させるだけの被害がこれまでにも度々発生し、ついにはその自衛策が講じられたのでしょう。

この国の人達は、なんでも勝手に持ち帰るのがお得意らしく、いまや彼らの行く先では、五つ星のホテルなどでもバスローブなど多くの備品が続々と姿を消しているそうで、壁にかけられた絵なども大型のスーツケースに入らないサイズにするとか、シャンプーやリンスも壁の埋め込み式にしても、それを壁から引き剥がしてまで持ち帰るのだそうですから、いやはや凄まじい限りです。

九州のとある観光地のホテルでは、小物の備品はもちろん、ついには大型の液晶テレビまで持ち去られたというのですから、もはや笑うに笑えない実情のようです。
そんな大きなものでも、持ち去りの被害に遭うことからみれば、薬や化粧品は、どれも小さなアイテムばかりで、さらにはこの国の人達には資生堂を始めとする日本製の化粧品や薬品は大人気だといいますから、恰好のターゲットなのでしょうね。

こういうことを書くと、「そうでない人もいる」とか「日本人にも悪い人はいます」などとわかりきったようなことを正論めかして言ってくる人が必ずいますが、こういう現実はもはや個人差の範囲ではないということを証明しているようなものです。

経営者にしてみれば、お客さんというより、窃盗団が堂々とやってくるようなもので、やむなくこのような店内自衛隊が組織されているんでしょう。

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