知人がふと口にしたことですが、曰く「苦手な人のタイプは、やたらと他人のことをあれこれ質問してくる人」なんだそうで、その嫌悪感が高じて人嫌いになった面があるという話を聞きました。
ここでいう質問とは、つまり「知りたがり」であり「詮索好き」という意味です。
マロニエ君は、さすがにそれで人嫌いになることこそなかったものの、いわゆる知りたがり屋というのは理屈抜きに嫌なものというのは、まったく同感です。
他人のことをなにやかやと知りたがる人というのは巷に少なくありません。
もちろんマロニエ君もターゲットになった経験は何度もあり、雑談に事よせてこちらのことを根ほり葉ほり聞いて来る人というのは、ひとつ答えるとまた次の質問になり、非礼の意識がないぶん歯止めが効きません。
そんなにいろいろと立ち入ったことを聞いてどうするのかと思いますが、おそらくはそれによって人を分類・整理していると思われ、それがいつしか欲求となり体質化してしまっているようです。だから人を見ればあれこれ聞かないことには安心できないのでしょうし、気持の上でも納まらないのだろうと思われます。
むかしの携帯電話のない時代は、電話をすると、その家のお母さんなどが出られる場合が多かったように思いますが、そんな中にもこの手合いがいて、不愉快になることがときどきあったのを思い出します。
こちらがきちんと自分の名を名乗っているにもかかわらず、友人なり知人に取り次いでもらうよう願い出ると、「どちらの○○さんでしょう?」とか「どういうご関係の方ですか?」などと、まことに失礼なことをズケズケ聞いてくる人がいて、思わずムッとしたことは一度や二度ではありません。
さすがに時代が変わって、そういうシチュエーションこそなくなりましたが、本質的に知りたがりという種族はまったく後を絶たないようです。
例えば、なにかというと他人およびその係累の職業などを聞きたがるのは、のぞき趣味丸出しというべきで、最終的に恥をかくのは自分であるのに、当人に自覚がない為に打つ手がありません。それを面と向かって指摘する人もまずいませんから、よほど身内から厳重注意でもされない限り、永久にその癖は直らないわけです。
マロニエ君は一線を越えると物を申す主義なので、あまりに礼を失した質問攻勢などに遭遇すると、「まるで身上調査をされているみたいですね!」というような皮肉を言ってストップを掛けることもありますが、それでも自省するどころか、今度は「あの人は秘密主義」というようなレッテルを貼ったりするなど、ただただ呆れる他はありません。
あらためて言うまでもまりませんが、よほど必要がある場合を除いて、不用意に他人の職業や家族の内情などプライバシーに触れることは慎むのが本来常識で、それはお付き合いの中からあくまで自然にわかってくる範囲に留めるべき事柄です。
なぜなら、世の中のすべての人が自分が満足する職業でいるわけではなく、むしろ数から言えば不本意な現実に甘んじている人のほうが多いかもしれず、そういう事を言いたくない聞かれたくない人も大勢いるわけで、それは学歴や住んでいる場所なども同様、実に多岐にわたり、今風に云うなら個人情報です。
極論すれば「人に職業を聞くというのは、おおよその収入を知りたがっているのと同じことだ」と言う人もあり、これは云われてみるとまったくなるほど!と思わず膝を打ちました。
ひどいのになると、住まいは一戸建てかマンションか、賃貸なのか、自己所有なのか、土地は何坪なのかなど信じられないようなことまで、とにかく自分の興味の赴くままに、どこまでも追い回して聞きたいわけで人迷惑も甚だしいことです。
一般に辛うじて常識となっているものでは「女性に歳を聞くのは失礼」などですが、それに匹敵するものは実は他にもたくさんあるのに、あまりにも無知で無法状態というのが実情です。
普通の人なら、十中八九そういう質問をされることに不快感を抱くはずですが、それでもなんとかその場はポーカーフェースで我慢するだけで、質問者のほうはまさかそんな悪印象を持たれているなんて夢にも思っていないのだろうと思うと、その意識のズレはやりきれません。
因みにマロニエ君は、自分の職業その他がとくに恥ずべきものとも誇れるものとも両方思っていませんが、しかし興味本位でそういうことをつつかれるのは、その底意や気配を感じるので愉快ではありません。
これは自分のことを知られたくないというよりは、無礼に対する単純な不快感と、のぞき趣味の人間の低級な興味に、むざむざ答えを与えてやって満足させるのが嫌なのです。
それにしても…なんでそんなにも人のことが気になるんでしょうねぇ。