前回書いた、昨年のチャイコフスキーコンクール優勝者ガラで使われたピアノは、ピアニストがトリフォノフということもあってか、ファツィオリのF278がステージに据えられていました。
これまでの印象では、この若いピアニストとイタリアの若いピアノメーカーはずいぶんとWin-Winの関係にあるようですから、それも当然のことだったのかもしれません。
なにぶん演奏が演奏だったおかげで、正直いってピアノどころではなく、もうどうでもいいような気もしましたが、ついでなので少しだけ。
音や響きの印象は以前と変わりませんので省略して、視覚的な印象です。
サイドに書かれたFAZIOLIの文字は、一般的な真鍮の金文字だとステージの照明や反射の具合で見えづらくなることがあるための対策なのか、常にくっきり目立つ白文字となっており、しかも遠目にも判読できやすくするためか、少し肉厚に書かれているのはビジュアルとしてあまりいいとは思えません。
もともとファツィオリのロゴは、デザインの美しさと個性が両立した素晴らしいもので、この点では、新興メーカーとしては出色の出来だと思っていますが、しかしそれはあの繊細でスリムなラインの微妙なバランスがあってのこと。これを少しでも肉厚(しかも白!)にすれば、あの雰囲気はたちまち損なわれるとマロニエ君は感じるわけです(少なくともピアノに彫りこむ文字としては)。
さらにはピアノの左サイド(客席側は右サイド)にまでこの白い肉厚ロゴを入れるのはちょっとくどすぎるし、あまりにも宣伝効果ばかりが表に出てしまい、却って好感度を削ぐような気がします。
この点はヤマハも同様ですが。
三方向にまでメーカー名を入れて、なにがなんでもその名をアピールしたいのなら、いっそ後ろのお尻部分にもタトゥのようにロゴマークを入れて、この際全方位対応にすればどうかと思います。
また細かい点では、ピアノソロの場合、多くは譜面台は外したスタイルで、その譜面台を差し込むためのボディ側のガイド部分が丸見えになりますが、これがいかにも安物っぽいただの金属棒(ファツィオリお得意の純金メッキなどが施されているのかも知れませんが)になっているのは、まるでアジア製の大量生産ピアノみたいでした。
ファツィオリは生産も少数で価格も最高級、何から何まで贅沢ずくめのセレブピアノを標榜し、それに沿った巧みな宣伝にも努めているメーカーのようですが、これはちょっとイメージにそぐわないというか、案外つまらないところで割り切った造り方をするんだなあと思いました。
それにしても、舞台上手(つまりピアノの後方から)のカメラアングルで驚くのは、そのお尻部分の大きさ幅広さで、これは圧巻です。女性で云うなら安産型体型とでもいうべきで、ボディからなにから、徹底して華奢なスリム体型を貫くスタインウェイとは対照的な豊満なプロポーションだと痛感させられます。
たぶん、ファツィオリは響板面積も他社よりかなり広く取る設計なのかもしれません。
使われていた椅子は、見慣れたポールジャンセンでも、バルツでも、ランザーニでもないもので、確認はできていませんが、おそらくはスペインのイドラウ社のコンサートベンチだろうと思います。
ずいぶん肉厚の大ぶりなベンチで、個人的にはあまり好ましくは思いませんでしたが、ファツィオリのむちむちした雰囲気とプロポーションには妙に合っていたと思います。
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たまたま検索して、こちらの記事を見つけました。
住んでいる近くにFAZIOLIのピアノが入っているホールがあります。
それはそれは、驚くほど素晴らしくふくよかで麗しい音色が広がる、
かなり評判のホールです。トリフォノフさんもリサイタルしたそうです。
そちらで初期に聞いたのですが、
報道関係からの取材類が多く、モノクロ写真のことも多々あるため、
新参者のメーカーゆえに、ロゴが写真の中でどんな時も必ず
鮮明に写るようにという意図で、
白いロゴシールをサイドに貼っているそうです。
シールを剥がすと、同じ場所に金属のロゴがあるそうです。
シールの場合には、フラッシュで反射してロゴがよく見えないということも
避けられるのだという説明でした。
そちらのホールは、もう5年くらいになるのですが、
先日コンサートを聴きに行った際には、シールが貼られておらず、
金属のカッコイイロゴが光っていましたよ!
やっぱり、FAZIOLIは外見も素晴らしく美しいと思います。