いまどきの現象をおひとつ。
各種の工事など専門作業をおこなう会社、または職人さんについてですが、彼らも厳しい時代の波の中で生きていることはいうまでもなく、昔のように決まった顧客やお得意さんだけを相手に仕事をしていれば済むというよき時代ではなくなりました。
とくに近年では、下請け、孫請けの仕事を獲得するだけでも大変なようで、親会社からは容赦なくコスト切り詰めが要求され、それに応じていかなければ別の会社や職人さんへ仕事がまわされるのですから、これを逃すまいと彼らも必死になって仕事をしているのは大変だろうと思います。
いっぽうで、そんな親会社から請け負う仕事だけではやっていけないのか、上から使われるのが嫌なのか、事情はともかくホームページなどで低価格を売りにして直取引をして仕事や販路を拡大しようという、独立型の小さな会社や職人さんの動きもあるようです。
マロニエ君も、必要があってちょっとした仕事を頼むとき、安い業者を探したことがありますが、縁あって非常に安くやってくれるある業者と知り合うことができました。
業者といっても身内でやっている職人さんで、そのときはさほど小さくもない仕事だったのですが、納得のいく価格で話が決まり、連日にわたって熱心に工事をやってくれました。
ひととおり作業が終わり、支払いも済ませて、いったんは区切りがついたことになりますが、その後もちょっとした作業の必要があったりすると、せっかく親しくなった職人さんなので、その人に頼むと、快く了解してはくれますが、どうしても大きい仕事が優先され、先方の都合に合わせて来てもらうことになります。
こちらとしても大した仕事ではないこともあり、あまり無理をいうわけにもいきませんが、再三の延期や日にちの変更が重なるとうんざりするのも事実です。作業そのものはごく短時間で完了しましたが、代金は最初(前回)に依頼したときの感じからすれば、期待ほど安いものではありませんでした。
まあ、それでも絶対額は大したものではないし、そこは素直に従いましたが、ついでにある器具を付けて欲しくてその旨を伝えると、これまた快諾。おおよその見積もり金額を伝えられ、近いうちにカタログを持ってくるのでその中から選んでほしいといわれました。
数日後、カタログを持って現れ、だいたいこのあたりということなのでその中から一つの器具を選びましたが、今回クチにする金額は、つい先日聞いていた金額より50%も高くなっていて、おや?と思いました。
カタログには販売価格が書かれていましたが、どうみてもそのままの価格での計算であるばかりか、工賃も安くないように感じられて、どうも釈然としません。
うっかりメーカーを確認していなかったのですが、ある夜、ネットで2時間以上かけて探してみたところ、ついにその商品を見つけ出しましたが、果たして聞いたこともないメーカーであるばかりか、ネット通販ではカタログの半額以下で売られているのにはびっくり!
もちろん極限の最安値で勝負するネットと同等を求めようとは思いませんが、せめて少しぐらいの値引きはするのがいまどきの常識というものでしょう。その他、ここには書かない疑問符のつく事例もあり、それらからだんだんわかってきたのは、要するに昔とはまったく逆の流れだということです。
昔は一見さんには高くても、おなじみになるにつれて互いの信頼も増し、値段もだんだん安くしてくれるようになるのが通例でしたが、今は逆で、まず最初は激安価格で人の気を引き、それによってお客さんの信頼を得ておいて、間違いなく自分の顧客になったと認識されるや、その後の値段はじわじわとつり上がっていくということのようです。
もちろん昔とは利幅も違うでしょうし、彼らなりの苦労があるのはわかりますが、それは誰しも同じこと。信頼を寄せ、利用頻度が増すに連れ、価格は反比例的に上昇して来るというのは、いくらなんでもいただけないやり方だと思いますし、がっかりしますね。