各店各様

マロニエ君の部屋に書いた、ディアパソンの210Eを購入予定の方とは、その後もずいぶん頻繁に連絡を取るようになりました。その方もディアパソンには格別な惚れ込みようで、購入されるのはもはや時間の問題だという強い意気込みを感じます。ディアパソンを心底気に入っているマロニエ君としては、こういう方の存在は大変うれしい限りです。

ほとんど市場に出回る個体はないに等しいとメーカー自身が言って憚らない210Eですが、ネットの普及とこの方の情熱、そして優秀な調査力の賜物か、数台の候補が挙がってきているのは驚きでした。
価格もバラバラですが、お店のほうも各店各様で、話を聞いているだけで興味深いものを感じてしまいました。

マロニエ君はいうまでもなく、それらのどの一台も現物を見たわけではないので、聞いた話からだけしか判断できませんが、210Eあたりになると必然的に製造後30年前後を経過したピアノということになり、そのコンディションもそれぞれ著しく異なる筈です。
ピアノには生まれながらに個体差があるといいますが、このぐらい古くなると、そんなことよりはこれまでどういう時間を過ごしてきたかのほうが圧倒的に問題であり、どんな所有者からどんな使われ方をしたか、きちんと技術者の手が入れられ大切にされてきたか、学校のような場所で容赦なく酷使されたか、置かれていた場所はどうだったかなど、いうなればピアノが嫁いだ後の環境差こそ問題とみるべきでしょう。
さらに今現在の整備状況や消耗品の状態などが重要な要素として加わります。

聞くところでは、販売価格こそ安いものの、話だけではちょっと躊躇したくなるようなものや、すでに売れ筋から除外されているのか、倉庫内に梱包したまま置かれているだけなのでお店側も詳しいことは確認不足であるなど、この日本の名器の扱われ方も実にさまざまのようです。

さまざまといえば、ピアノ店の在り方も同様で、規模は小さくとも技術で勝負をして、一台一台をきちんとした状態で(もちろん商売なので、採算に合わないことはできないにしても、できるだけ良心的な状態に仕上げて)売っている店があるいっぽう、やたら在庫数にものを云わせ、高級ブランド高額ピアノを前面に押し出している店、あるいはその中間的な性格の店など、お店によってピアノに対するスタンスも大きく異なるのは以前から変わらないようです。

意外なことには、ほとんど何も手を入れずに、酷い(と想像される)コンディションのピアノを売ることにも、いわゆる大型店のほうが畏れ知らずで、しかも価格はその状態に見合ったものとは思えない金額を堂々と提示してくるかと思うと、モノが売れない世相を反映してか、だんだん条件が好転してくるなど、逐一報告していただくお陰で、まるで連続ドラマを見るようにおもしろい思いをさせてもらっています。

聞けば、店によってはメールで問い合わせなどをしても、なかなか返事がないなど、あまり本気度が少ないようなお店があるいっぽう、技術者の工房系のお店などは、メールなどにもすぐに明快な応答があるようで、こういう部分の反応というものはお客さんの心証に大きな影響や先入観を与えてしまうのはやむを得ない要素です。ピアノ販売に限りませんが、問い合わせに対して迅速な対応というのは人間関係の基本だと思わずにいられません。

とりわけディアパソンは、お店によってその捉え方が相当違いますし、極端なところでは仕入れも販売もしないようですが、そのいっぽうで極めて高い評価をしている店があるのも事実で、どうかするとお店の看板商品的(新品)な扱いをしているところもあったりと、考えてみれば、日本のピアノでこれほど評価の別れるブランドも珍しいと思います。

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