一位と二位で

早いもので、今年もお盆の時期を迎えました。
例年にない猛暑列島の中、多くの人々がフライパンの上を大移動をするみたいで、そのエネルギーたるや大変なものだなあと思わずにはいられません。

家人から聞いた話ですが、お盆の初日13日にあたり、テレビニュースではそれに関するもろもろの話題を採り上げていたらしく、最も興味深かったのが「ストレス」に関するものだったとか。

なんと、現代の日本人が一年を通じて最もストレスを感じる時期というのがお盆休みなのだそうで、その第1位は、この真夏の真っ只中に、家族を引き連れて夫妻いずれかの実家に帰省することが定例化していることだとか。てっきりそれが楽しいのかと思いきや、多くの人達には大変な重荷になっているというのですから驚きました。
今の今だからとくにそう云うのかもしれませんが。

とりわけ実家が遠方になればなるだけ、交通費は嵩み、お土産だなんだと出費はあるし、移動に要するエネルギー消耗も増加するのは当然です。着いた先も、自分の実家だとはいっても、連れ合いにとっては気を遣う場所でもあるでしょうし、単なる旅行のようにポンとホテルに泊まって、あとは気まま遊び歩くというわけにもいかないのでしょう。

さらに驚くべきは、ストレスの第2位はそれを迎え入れる実家側の人々なのだそうで、これまた驚きました。自分の子ども一家の帰省であり、かわいい孫というような喜ばしいファクターもあるのでしょうが、やはりそこには甚大なストレスという本音が隠れ棲んでいるというのが、いかにも人間のおもしろい(といっては悪いなら複雑な)部分だと思いました。

たしかにひとくちに「実家」などと云っても、誰もが部屋の有り余った大邸宅に住んでいるわけではないし、突如増加する人の数といいますか、単に物理的側面だけをみても、相当に苦しい状況が否応なく生まれるのは明らかです。いかに我が子の大切なファミリーとはいえ普段別に生活している者が、束になって帰省の名の下に押し寄せてくれば、それまでなんとか保っていた平穏な生活のリズムは大きく乱され、なんでもが「嬉しい」わけでも「賑やか」なわけでもないというのが実情のようです。

そんなストレスの第1位と第2位が、お互いの本音を隠しながら、真夏の狂騒模様を必死に演じているとすれば、いかにも切ない人間のアイロニーを感じてしまいます。マロニエ君などは、だったらいっそ本音を打ち割って双方了解を得て、そんな疲れることは端から止めてしまえばいいのに思いますが、まあそれが簡単にできないところが人間社会の難しいところなのかもしれません。

マロニエ君宅の知人の女性の話ですが、夫を亡くし、東京で一家を構える息子のもとへ遊びがてらしばらく逗留したところ、奥さんも昼は仕事をして不在、子ども達は学校、息子はもちろん仕事で、必然的に毎日見知らぬ土地で孤独の時間を過ごすハメになり、やっと家族が集う夕食時ともなると、今度は2人いる子どもが、食事をしながらケータイかなにかのゲームに打ち興じるばかりで、まるで会話というものがなく、それを叱ろうともしない息子夫婦にも呆れつつ、たまに訪ねてきてはお説教というのも躊躇われて、とうとう予定を切り上げて帰ってきたという顛末がありました。

身内といっても、しだいに人との関係には元には戻れない深刻な変化が起こっているのかもしれません。

聞くところによると、現代人の最も苦手なものは「人付き合い」なんだそうで、他人同士はいうに及ばず、身内でも自然な人付き合いができないために、人がどんどんバラバラになっていくようで、これをいまどきの社会現象だといってしまえばそれまでですが、そんなバラバラな者同士が増えるだけ増えて、この先どうなってしまうのだろうと思います。

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