開けてびっくり、2020年夏のオリンピック開催地が東京に決定したことは、まずは喜ばしい、おめでたいことだったと思います。
実を云うとマロニエ君の予想では、東京はほぼ落選するものと思っていました。
いきなりこう云ってはなんですが、そもそもマロニエ君はオリンピック誘致にさほど熱心な気持があるわけでもなく、観るとしてもどうせテレビだし、どこでやっても自分にとっては同じ事という考えでした。それどころか、あの過密都市東京で、この上にオリンピックのような壮大なイベントをやるなんて、考えただけでも息が詰まるようでした。
それに、その東京の、いつも怒っている猫みたいな猪瀬知事の様子にも違和感があり、それがいつしかこわばったような悲痛な笑顔を作り始め、無理してテンションあげているような、同時に何かに取り憑かれたような不自然な言動を見ていると、いよいよ東京は無理だろうという予感が強まってくる気がしていたものです。
下馬評でもマドリードが優勢のように伝えられていましたし、さらに東京不利を決定付けたと見えたのは、ブエノスアイレスで行われたJOC会長の竹田氏の記者会見で、大半の外国人記者から福島原発の汚染水に関する環境面の質問を受けた折の対応で、英語はたちまち日本語に切り替わり、おたおたして適切な対応も出来ないまま「政府が説明する」「安部さんが来る」「福島と東京とは距離がある」などの繰り返しで、これが長年JOC会長を務め、さらにはIOCにも深く関与している人物の発言とは信じられない思いでした。
質問した記者からも、会見後、氏の対応には驚いたという声が聞かれ、これで完全に東京の芽はなくなったと思っていたところ、フタを開けてみれば順序から云うと最有力視されていたマドリードがまずはじめに落選し、決選投票によって東京に決定したのは、とりあえず日本人として素直に良かったとは思ったものの、なんだか狐につままれたような印象でした。
これはロシアで開催中のG20を中座してまでブエノスアイレスに駆けつけた安部さんによる強力な巻き返しが功を奏したのか、皇族の慣例を破ってこの地に赴かれた高円宮妃久子様など周りの皆さんの功績とフォローが大きかったのかとも思いました。ネットニュースによれば「最終プレゼンが勝因」とありましたから、だとすると安部さんの汚染水に関する安全説明が決め手ということでもありますが、いずれにしろ結果は東京誘致は成功したのですから、ものごと最後までわからないものですね。
あとから聞いた話では、近い将来フランスが開催の野心をもっている由で、そうなると前回がロンドンだったこともあり、今回マドリードに決まれば、ヨーロッパの開催が増えすぎることでフランス開催が難しくなるため、ここはいったんアジアへもっていこうというバランス感覚も作用したとか…。
それはそれとして、オリンピック開催にかくも世界が躍起になるのは、とうてい崇高・純粋なスポーツ愛好精神からではないことは明白で、今の世界で最も有名で最もわかりやすい世界最大規模のイベントを開催することでもたらされる開催国の発展や経済効果、知名度アップなど、そこについてまわるもろもろの「オリンピック特需」が欲しいからにほかならないと思います。
アベノミクスという言葉にもそろそろ効力が薄まりつつある今日、東京オリンピック開催という新しい目的が出来ることによって、この疲弊しきった日本の社会が少しでも息を吹き返せるのであれば、それはそれで結構なことだと思います。
景気は気、まさに気分の負うところが大きいと云われますから、これで少しは日本人が明るい気分に転換できるよう期待したいと思います。
今の日本は自分を含めて、あまりにも暗くてみみっちくて不健康ですから。